VOL.36 1996年12月8日 重慶
楽山から次の町へ⋯⋯でもどのバスに乗ればいいのか?
5時45分に起きた。そして6時15分にはチェックアウトをし、楽山の汽車中心駅まで歩いた。
空はまだ暗かった。それでも手袋をしなくても十分な暖かさだった。もう張り詰めた寒さに耐えなくても良さそうだ。
バスの駅には7時10分前に着いた。だけど、どのバスに乗っていいのかさっぱり分からなかった。
ある人は「あっち」だと言い、「あっち」に行けば「そっち」だと言い、「そっち」に行けば「こっち」だと言われた。誰が正しいのか分からないので、「あっち」「そっち」「こっち」と言う人たちを集めて、誰が正しいのか話し合ってくれとお願いした。
すると目の前のバスに乗ってもいいが、游亭舗というところまでは75元なので、残り42元払え、という。「なんで?」と訊ねると、料金表を見せて游亭舗まで75元というのを証明してくれた。
なるほど。だが、ものすごく高い。ものすごく高いが誰にも文句が言えず、中国の交通機関の仕組みが分からないのを確認したのだった。
僕は游亭舗という地図にも乗っていないようなところへ行って、そこから大足へ行こうと計画をしていた。大足には特別行きたいわけじゃなかった。石刻があるらしいが、有料で、しかも50元近くもかかる。
楽山の交通機関で訳が分からなければ、游亭舗や大足ではもっと困りそうで、不安になるばかりだった。
そのバスは重慶行きだった。重慶までは90元。距離を考えると、バカ高いという印象。
だけど僕は、この混乱する中国でさらなる混乱を求めて、さほど興味もない小さな町に寄るのをやめ、90元払って、重慶まで直接行くことにした。
豪華なバスで重慶へ。そこでも意思の疎通に四苦八苦
バスの中は今までに見たことがないくらいきれいで、スピードも早く、エアコンもついていた。列車でいうところの「軟座」レベルだろうか。席も十分に余裕があり、ビデオも流れたり、快適だったのでしょうがないだろう。
ただし、ビデオはカラオケだったり、訳の分からん、映りの悪い香港映画だったりで、その点には満足出来なかった。
重慶に着いて、「地球の歩き方」の地図だけではさっぱり道が分からなかった。だからホテルまでの行き方も分からない。
人民に道を訊ねたが、どの人民も中国語でまくしたてるだけで、さっぱり会話にならない。
ここはどこだと、体全体と地図を使ったジェスチャーで訊ねても、彼らは中国語をしゃべるだけ。こちらが中国語を理解できないという想像ができていないようだ。
僕はそんな想像力のない人民だと分かると軽くいなしながら、次から次へと訊ねまくった。だが、どの人民も同じだった。
仕方がないので、紙に書いてバスに乗り、親切な女性の乗務員に見せると、指定したホテルまで連れて行ってくれた。
ホテルは70元と、中国で泊まったホテルの中では一番高かった。だがとても広く、エアコンもついていた。しかも6人部屋なのに、今日の客は僕一人。つまり6人部屋を独り占め。快適な眠りにありつけそうだ。
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