VOL.32 1996年12月4日 成都
気難しい同居人
交通飯店は50元するだけあって、朝食もついているし、ベッドメイキングもしてくれる。朝食は小さなトーストが2枚、目玉焼き、ポテトフライ、そしてコーヒーがついている。洋式が2種類、中華が1種類、計3パターンが選べるシステムになっている。
ベッドメイクは特に必要ないので、断った。
そんなことより、なにより嬉しいのは、朝からシャワーが浴びられることだ。寒くても、温かいシャワーを浴びることができれば、気持ちいい朝を迎えることができる。
同室のムラウチさんは、なかなかに変わり者だ。悪い人ではないと思うのだが、やや教条的で、融通がきかない。なんでも、ウンウン、そうですね、と言っておけば、話はスムーズに進むのだけど、少しでも違う意見を言うと、どんどん突っ込んでくる。言ってしまえば、非常に面倒くさい。
僕とは少し考え方が違うので、意見がぶつかりあうこともあるが、着地点が気持ち悪い。
僕より年上ということもあり、一応気を使って、こちらで折れるようにしているが、強引な終わり方をすることが度々ある。こちらからすると、それなりにストレスだが、ムラウチさんはまったく気づかない。
ムラウチさんはなんと、結婚しているという。奥さんが日本で働いているらしいのに、本人は貧乏旅行を楽しんでいる。奥さんは怒らないのか。ある時訊いてみたことがあるが、返ってきたのは、
「俺、文句言わせないから」
というものだった。
金があるのか、単なる亭主関白なのか、どこからくる自信なのかは不明だが、別の人が言うと格好いいかもしれないが、ムラウチさんが言うと、イタイ人だと思ってしまう。
子供もいないというし、自由な旅を楽しんでるし、何のために結婚したのかなと思うが、そんな疑問を言おうもなら、延々と理屈をこねるので、飲み込んでしまうことにしている。
四川の麻婆豆腐の辛さはレベルが違う
昼、ムラウチさんと一緒に麻婆豆腐の元祖といわれている店に行った。この店の陳お婆さんが作った豆腐の料理が、麻婆豆腐の始まりだそうだ。
結論としては、非常に、非常に辛かった。
四川料理は辛いものなので、覚悟はしていたが、辛いのを楽しめるレベルではなかった。成都の料理は全部が全部辛い。韓国なんかよりももっと辛い。人間の食べ物とは思えないほど辛い。
砂鍋も、刀削麺も、例外なく辛かったが、麻婆豆腐が一番辛かった。味など感じる余裕などなかった。
ただ、麻婆豆腐よりも麻辣豆腐という、もう一段辛いものが存在するらしいが、僕にはチャレンジする勇気はなかった。
成都の町は大きいのだが、珍しいものはない。だから面白いことはない。ホテル代も高いので、明日もう一泊だけして、楽山にでも行こうと思う。
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