VOL.21 北京観光
1996年11月22日 北京
商店でのショッピング
風邪はほとんど治ったと思い、僕は街を歩いた。
前門駅まで歩いていくつもりで、北京の一角を眺めた。服屋の並んだ一角で僕はセーターを買った。
タカムラさんは20元も出せば買えると言っていた。確かに20前後のセーターが店に並んではいたが、すぐにほつれてきそうな、ペラペラのセーターばかりだった。
僕はタートルネックのセーターが欲しかった。タートルネックならマフラーがいらないという理由だ。
僕が欲しいと思ったタートルネックのセーターが見つかり、値段を聞いた。
「多少銭?」
中国を旅するうえで、覚えなくてはならない中国語の第一候補は、「多少銭?」だと思う。
英語でいうところの、「How much ?」である。
初日からぼったくられることが気になっていたので、真っ先に覚えた。
店員は「88元」だと言ってきた。
日本円にすると1200円程度だ。日本の感覚だと安いのだが、中国の物価からすると、かなり怪しい。
僕は30元くらいのセーターはないか、というのを身振り手振りで訊いてみた。
口頭ではうまく伝わらないので、紙に「30元」で書いてみる。
それを見た年配の女性の店員は、二人で顔を見合わせてケラケラと笑った。
「そんもん、あるかいな」と言わんばかりの笑い方。
いかにも中国っぽく、悪気はないかもしれないが、能天気な感じ。釣られて僕も一緒に笑う。
笑いながら、その場を立ち去ろうとすると、店員の一人が、「60」と伝えてきた。
値下げをしてきたのだ。
なるほど。やはりふっかけられていたのだ。
僕は「60」と書かれた紙の横に「40」と書いた。
また笑いが起こった。
そして今度は、それを見ていた別の男の店員が、「55」と書きにくる。
僕はその横に「50」と書く。
またまた笑いが起こる。
しかし、男の店員は、首を縦に振った。商談成立。
もしかしたらもっと値切れたのかもしれないが、こういった交渉が苦手な僕としては上等だ。
50元を日本円に換算すると700円。十分だろう。
とにかく中国は安い。そう思わざるを得ない。
自然科学博物館
自然科学博物館へ行った。
人間の成長の過程を説明するのに、本物の胎児をホルマリン漬けにしていることで有名な博物館だ。
胎児は5週目で小さいながらも手と足がしっかりと判別できるほどに成長する。
そして3ヶ月目には拳くらいの大きさになり、4ヶ月目にはその倍ほどの大きさに、5ヶ月目には拳3つ分くらいの大きさになる。
人形のように真っ白で、手と足が細く、頭と腹が大きい。まるでアフリカの難民の子供のようだ。
故宮
故宮の入場料は55元。日本語で解説してくれるテープレコーダーも30元で借りたので、合計85元。中国に入ってから一番の出費だ。
中国の観光地は、ほとんどのところで中国人料金とは別に、外国人料金が設定されている。
85元なのは、もちろん外国人料金だからだ。
故宮はとてもでかい。端からは端でなく歩いてみたが、さすがに疲れた。
昔の中国の皇帝の絶対的偉大さは確かにうかがえた。中国では今も昔も国を象徴するものにはとことんお金をかける。それは日本のかけ方とはやはり違う。
解説してくれるテープレコーダーを借りたので、造りの細かさが分かり、さらに実感した。
例えばすべて木造建築であったり、大理石は1枚ものを使っていたり、天井には無数の龍や鳳が描かれている。ひさしには雌鳥に乗った人を先頭に、天馬とか獅子とかが10匹もいる。確かにすごい。
中国のバス事情
地図をホテルに置き忘れたので、帰り道は途中で迷ってしまい、バス停に向かうはずが、いつの間にか北京駅に着いていた。
ついでなので、次の目的地である西安までの切符を買おうと思ったが、どうやら北京駅からは出ていないようだ。
北京には北京駅以外にいくつか駅がある。北京西駅、北京南駅、北京北駅。
北京西駅が一番新しいらしいのだが、規模も他の駅と比べてかなり大きかった。西安行きの列車は北京西駅からのようだ。
僕が持っている時刻表には北京駅から出ていると書かれてある。おそらく煙台の駅の売店で、古い時刻表をつかまされたのだろう。昔の時刻表を倍の値段で売りつけようとしていたのだ。恐るべし。
地下鉄に乗り、前門では降りずに、和平門で降りた。そこから14番のバスに乗りさえすればホテルの近くに停まるはず。
だが、僕は間違って逆方向に向かう14番のバスに乗ってしまったらしく、結局かなりの大回りになってしまい、倍のお金を払うこととなった。
バスは恐ろしいくらいに混んでいた。というより、北京では人が少ない時間はないようだ。どの時間帯も、どこにでも、たくさんの人がいる。毎日、毎時間がラッシュアワーだ。
今日の家計簿
- タートルネックセーター 50元
- 自然科学博物館 15元
- 故宮(入場料) 55元
- 故宮(解説テープレコーダー) 30元
- 弁当 20元
- 桂花陳酒 11元
- ハムの缶詰 5.8元
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