VOL.15 韓国最後の夜
ルーとレオンと
土曜日から泊まっている28歳のドイツ人・レオンはとてもファンキーだ。口笛を吹いたり、鼻歌を歌ったり、時には歌詞付きで歌ったりもする。
坊主頭でいかにも「ドイツ人」という顔立ちの彼はよくしゃべり、よく笑う。僕が「こんにちは」という日本語を教えてあげると、うれしそうに何回も復唱した。
それでいて、なかなか頭がよさそうだ。それはベルギー人のルーとレオンと3人で会話をしているときにも感じる。
ルーは英語を母国語同然に話すが、スペルには弱いようだ。僕が理解できない英語の意味を分からせる手段は、ルーの場合は僕の持っている辞書を使うしかない。だがレオンにかかれば、僕でもすぐ分かるようになる。
例えば、「リート」と聞こえる単語の意味を僕が理解しかねていると、ルーは「リート、リート」と繰り返し、なんで分からんのかと言わんばかりの形相になるが、レオンは「write-read」と類似する単語をあげてくれる。それで僕は「リート」ではなく、「リード」のことかとわかるようになる。
ルーもとてもいい人なのだが、言葉の壁というのは、どんなときもいい点ばかりじゃないよってことを教えてくれるフィルターのような役目をするのだと思った。
ソウル最後の晩餐
今夜がソウル最後の夜になる。
そう思って、ビールの大ビンともち米を辛ソースで煮たものを買ってきて食べることにした。後で「地球の歩き方」を見て知ったのだが、このもち米を辛ソースで煮たものというのは、トッポギというらしい。通りの屋台で売っていたのだが、道行く人が買って帰るのを見て、食べたくなった。「地球の歩き方」には、若い女性にも人気があると書いてある。
期待もあって、キムチ鍋の中に入っているもちのようなイメージをして口に入れたのだが、どうも期待はずれだった。ソースは出汁が効いてないのか、ただ辛いだけで、旨味がない。トッポギ本体もふにゃふにゃしてるだけで、マカロニをもう少し粘らせたような食感だった。
僕の舌には合わなくて、最後まで平らげるのに、努力が必要だった。
さらにビールも日本のビールとは違っていた。馴染のない味だからか、これもうまいとは思えなかった。
貧乏旅行ゆえに、お酒も我慢していて、ソウル最後の夜だという理由を作ってせっかく買ったものが、ことごとく失敗だった。
韓国最後の夕食は決していい記憶にはならないだろう。
韓国はもう飽き飽きとしていたが、最後となるとやり残したことがあるようで、心にひっかかる。出国というのはこういうものなのだろう。
今日の家計簿
- ビール(大ビン) 1,650₩
- トッポギ 1,500₩
- ビビンバ 970₩
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