VOL.13 抜糸
折り鶴
昨日の夕方から夜にかけてドミトリーは僕とベルギー人のルーだけだった。僕が日本から持ってきた折り紙の本を広げて、ゴミ箱を作ろうとしていると、珍しくルーがベッドから降りて来て、僕に話しかけてきた。
ルーが珍しがるので鶴の折り方を教えてあげた。鶴のことはcrane birdというらしい。
器用に見えるルーも折り紙は難しかったようで、苦心の末にできた自分の作品を
「オー、クレインバード! ブーン、ブーン」
などと言いながら、子どものように喜んでいた。
ルーとはしばらく話をした。僕の英語が情けないほど乏しいので、時々辞書を引きながらの会話だった。
3年以上もアジアを旅しているルーの知識は僕にとってかなり役に立つはずなのに、僕は難しい情報を得るような会話ができなかった。もどかしくて、もったいない。
そうこうしていると、釜山に行っていたヤマウチくんがソウルに戻ってきた。彼は僕に輪をかけて英語が苦手であった。
今日は街を歩かずにずっと本を読んでいた。
夕方くらいになってスーパーマーケットまで買い物に行った。コンビニより安く、品揃えもよく、もっと早くこの店を見つけていればよかった。
クレイジー!
夜になってヤマウチくんに頭の傷の抜糸を頼んだ。彼は少し頼りなさそうに見えたが、日本語が分かる人じゃないと僕が不安だった。
簡単な作業だと思っていたけど、縫い方がとても雑で縫っている糸が黒色だったので、糸を見つけるのに苦労したようだ。
僕らのことを二段ベッドの上から眺めていたルーは、気になって声をかけてきた。拙い英語で、僕が釜山で起こった事件のことを話し、その時に縫った糸を抜いてもらっていることを説明した。
ルーは「クレイジー!」と叫んでいたが、放っておけなくなったようで、ヤマウチくんに懐中電灯を照らさせて、自分はハサミを手に取り、僕の頭を縫っている糸を探し始めた。
縫った後に血や体液が糸に絡みついてかさぶたになっていたので、かさぶたも少しずつ取らなければならなかった。
髪の毛も大分切られた。
3針分の糸は抜けたが、最後の1本分の糸がどうしても見つからない。僕が手で触っても、ナイロンの糸のような感触はなかった。3針しか縫っていなかったのだろうか。
少し疑問は残ったが、糸がもう見当たらないので、3針だったのだろうということで、最後に赤チン(ヨードチンキ)を塗って、ルーのオペは終了した。
今日の家計簿
- レタス 1,710₩
- マヨネーズ300g 1,150₩
- ツナ缶 960₩
- アンパン 1,700₩
- もやし 900₩
- シャンパン 2,270₩
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