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VOL.11 S字フックがほしい
S字フックを探し求める
南大門に行って細々とした必要な物をそろえた。
はさみやファイルなどの文房具、バックパックにつけるチェーンロック、そしてS字型の簡易フック。
これから中国に行くと、トイレ事情はかなり劣悪だと耳にする。トイレにカバンをひっかけるところがなく、下に置けるような清潔さはまったくないと聞かされていた。なので、中国に入る前にS字フックはなんとしてでも手に入れておきたかった。
S字フックは日本だと100円ショップなんかで3つくらいセットで売っているが、ソウルのあちこちで探してみたが、販売しているのを見つけられなかった。どの店でも商品をぶら下げるのに使用されているのを見かけたが、どこに売っているのかを誰に訊ねても答えが返ってこなかった。
店で余っているフックを手にとって、売ってほしいと言ってみたが、相手にされなかった。
いくら探しても売ってないし、あり余っているのに売ってくれないので、困り果てた僕は、チェーンロックを買う際に、あたかもチェーンロックの一部のようにひっかけて、レジに持っていってみた。
店員は気づかずに、S字フックがくっついたチェーンロックを雑に袋に入れて僕に渡してくれた。
ちょっとドキドキしたが、なぜこんなものを手にいれるだけで、どきどきしないといけないのか。
日本では各家庭にゴロゴロ無駄に転がっているような簡易フックは、韓国でも同じだった。なのになぜか売っているところが見つけられない。
言葉も自由に使えない初めての土地では、こんな些細なことですら苦労するのだから、これからもっともっと苦労することがあるのだろう。
そんな苦労が楽しいと思うのが旅なんだろう。
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