VOL.7 自炊
ソウル散歩
昨日不機嫌だった黒人はガーナから来ているクリスチャンだった。名前はイマというらしい。顔は怖いが、挨拶して、少し話してみると、悪い人間ではなかった。ビジネスで韓国に来ているという。
イマは朝も早いうちから起き出して、何やらごそごそしているかと思うと、10時くらいに教会へと出かけて行った。
僕も同じくらいに出かけて、昨日と同じようにソウルの町を歩いた。
ソウル駅を目指したが、なかなか見つからず、結局たったひと駅だったが、地下鉄に乗った。
いくつもの国をまわるので、かさばるガイドブックのようなものは持っていなかった。地図もなく、どこに何があるのかもまったく分からない土地では、歩いている目的を見つけにくかった。
日曜日だというのに、観光案内所はことごとく閉まっていた。大韓門の前の案内所でようやく地図が手に入った。
地図が手に入ると、ようやく地理関係が分かるようになった。ただ、そうなると次はガイドブックが欲しくなった。ガイドブックの情報があった方が圧倒的に効率的だし、観光地にしても、歴史や背景を知っていた方が満足度も変わってくる。
大きな本屋を見つけたので、そこで地球の歩き方の韓国版を立ち読みして、次に訪れる中国版を購入した。
それにしても、まわりの人の顔も日本と同じようだし、書店では日本の本がずらりと並んでいて、外国にいるような気がしなくなる。
イマに自炊を教わる
宿に帰ると、イマがご飯を食べていた。弁当ではなく、アルミの皿にご飯を盛り、缶詰をおかずにしていた。
「それは自炊か?」
僕が訊くと、イマは「そうだ、お前もしたいのか」と訊いてきた。
「したい」と僕は即答した。
イマは残りの缶詰を米の上にぶっかけて、さささっと平らげると、食器が置いてある場所に案内してくれた。そこにはボコボコにへこんだ鍋や皿などが置かれてあり、宿泊者が共同で使っているようだ。そしてガスコンロも置いてある。
僕は近くのスーパーマーケットで米とサバの缶詰を買ってきて、鍋でさっそく米を炊いた。キャンプで米を炊くことには慣れていたが、鍋には蓋がなかった。
イマに蓋はどこかと訊ねると、イマはどんぶりを取り出し、鍋に被せ、これで大丈夫だと言わんばかりに、親指を立てた。
米はどんぶりの蓋でも案外うまく炊けた。サバ缶と白ご飯だけの夕ご飯は味気ないものではあったが、これから始まる貧乏旅行では、こういう節約も覚えておいたほうがいいだろう。
ただ、食器類に決して清潔感がないのは気になるところだった。
清潔感でいうと、韓国で気になったことがもう1つある。トイレだ。
全体的きれいトイレが多いのだが、トイレットペーパーではなく、ティッシュで尻を拭かなければならず、しかもそれを流すと詰まるらしく、設置されたゴミ箱に入れなければならない。
自分のウンチがついたティッシュでさえ見るのも嫌になるのに、ゴミ箱には他人のウンチがついたティッシュが入っているのは、決して気分がいいものではなかった。
中国に行けば、もっとカルチャーショックを受けるだろうから、これくらいは早く慣れて置かなければならない。でも、しかし、僕はこれに慣れることができるのだろうか。
家計簿
- ヨードチンキ 1,000₩
- 地球の歩き方(中国版) 15,400₩
- うどんとキンパ 7,000₩
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